1.N1ビザでどのような仕事をすることができるのか

(1)一般的な就労ビザで働ける業種

日本で働くことができる在留資格(就労ビザ)には様々な種類があります。
多くの外国人の方が取得する就労ビザは
〇技術・人文知識・国際業務
〇技能
ではないでしょうか。

ア.技術・人文知識・国際業務で働ける業種

一般的にエンジニア、通訳、デザイナー、一般企業の語学教師等となります。
オフィスワーカーはこのビザで就労するのが一般的です。

イ.技能で働ける業種

調理師、スポーツ指導者、貴金属等の加工職人等です。

店内で働くウェイターや、工場でのラインで作業される従業員の方、タクシーの運転手は入っていないようですが、上記等に入るのでしょうか。

残念ながら、ウェイターや工場の従業員、タクシーの運転手は原則として「技術・人文知識・国際業務」、「技能」で働くことはできないのです。

就職活動をする外国人留学生にとって、景気が上向かない中、就職先に制限があるというのは、非常に大変なことです。
雇用する企業としても、配置転換が難しくなり、採用のハードルも上がってしまうかもしれません。

(2)N1ビザ(特定活動)で働ける業種

N1ビザで働くことができる業種には「日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務」であると定義付けられています。
さらに、「日本の大学又は大学院において習得した広い知識及び応用的能力等を活用するものと認められること」とも書かれています。
これだけでは、いったい何の仕事をすることができるのか分かりづらいですね。
そこで、具体的な活動例も公表されています

ア.具体的な業務内容例

(ア)飲食店に採用され、店舗管理業務や通訳を兼ねた接客業務を行うもの。
外国人だけではなく、日本人に対する接客を行うことも可能です。
   ただし、厨房での皿洗いや、清掃のみに従事することは認められません。

(イ)工場のラインにおいて、日本人従業員から受けた作業指示を技能実習生や他の外国人従業員に対し、外国語で伝達・指導しつつ、自らもラインに入って業務を行うもの。
   ただし、ラインで指示された作業にのみ従事することは認められません

(ウ)小売店において、仕入れ、商品企画や、通訳を兼ねた接客販売業務を行うもの。
外国人だけではなく、日本人に対する接客を行うことも可能です 。
   ただし、商品の陳列や店舗の清掃にのみ従事することは認められません

(エ)ホテルや旅館において、翻訳業務を兼ねた外国語によるホームページの開設、更新作業等の広報業務を行うものや、外国人客への通訳(案内)を兼ねたベルスタッフやドアマンとして接客を行うもの。
外国人だけではなく、日本人に対する接客を行うことも可能です 。
   ただし、客室の清掃にのみ従事することは認められません。

(オ)タクシー会社において、観光客(集客)のための企画・立案や自ら通訳を兼ねた観光案内を行うタクシードライバーとして活動するもの。
通常のタクシードライバーとして乗務することも可能です。
   ただし、車両の整備や清掃のみに従事することは認められません。
   なお、タクシーの運転をするためには、第二種免許を取得する必要があります。

(カ)介護施設において、外国人従業員や技能実習生への指導を行いながら、日本語を用いて介護業務に従事するもの。
   ただし、施設内の清掃や衣服の洗濯のみに従事することは認められません。

(キ)食品製造会社において、他の従業員との間で日本語を用いたコミュニケーションを取りながら商品の企画・開発を行いつつ、自らも商品製造ラインに入って作業を行うもの。
   ただし、単に商品製造ラインに入り、日本語による作業指示を受け、指示された作業にのみ従事することは認められません。

2.N1ビザ(特定活動)取得の要件

当該N1ビザ(特定活動)は誰でも申請できるビザとはなっておりません。日本の大学を卒業又は大学院の課程を修了し、学位を授与された方で、高い日本語能力を有する方が対象となっています。

(1)学歴要件

原則として日本の4年制大学又は大学院を修了された方に限られます。短期大学、専修学校や外国の大学、大学院の修了は対象となりません。

(2)日本語能力要件

ア.日本語能力試験N1又はBJTビジネス日本語能力テストで480点以上を有する方。
級試験制度の日本語検定1級も対象となります。
日本語能力試験を受験される外国人の方が多いことから、この特定活動ビザはN1ビザとも呼ばれています。

イ.大学又は大学院において「日本語」を専攻して卒業された方は、アを満たすものとして取り扱います。
つまり、日本の大学又は大学院で「日本語」を専攻し、卒業した場合はN1BJTビジネス日本語能力テストで480点以上を有している必要はありません。

外国の大学・大学院において「日本語」を専攻した方についてもア.を満たすものとして取り扱いますが、この場合であっても、日本の大学・大学院を卒業・修了している必要があります。

(3)要件事例

ア.日本の4年制大学又は大学院を卒業+ 日本語能力試験N1又はBJTビジネス日本語能力テストで480点以上

イ.日本の大学又は大学院において「日本語」を専攻して卒業

ウ.外国の大学・大学院において「日本語」を専攻 して卒業+ 日本の4年制大学又は大学院を卒業

3.N1ビザ(特定活動)で家族を呼ぶことはできるのか

日本で仕事を始めたら家族を呼びたい、又は大学に通いながら家族と一緒に暮らしている、という方もいらっしゃることと存じまず。特定活動ビザで家族を呼ぶことはできるのでしょうか。

ご安心下さい、ご家族を本国から呼び、一緒に暮らすことができます。ただし、家族であれば誰でも呼ぶことができるわけではなく、原則として配偶者、未成年の子供に限られていますので、ご注意ください。

ご家族を呼ぶ場合、ご家族が手にするビザも「特定活動」となります。

4.転職時の注意事項

通常の就労ビザ(技術・人文知識・国際業務や技能等)では、転職時に入管に届出をすることが義務付けられています。しかし、現在有するビザはそのままに、特別新しくビザを申請する必要はありません。

しかし、N1ビザ(特定活動)の場合はそうはいきません。
N1
ビザ(特定活動では申請時の法人でしか勤務することができないため、転職すると再度「在留資格変更許可申請」をする必要があります。

5.雇用時の注意事項

4でご説明したように、N1ビザ(特定活動)は所属機関と紐づけされおります。つまり、契約機関における活動のみが認められていることから、派遣社員として派遣先において働くこともできないのです。

それ例外に、契約機関が適切に雇用管理を行っている必要があることから、社会保険の加入状況等についても、必要に応じ確認を求められることになります。

その他、報酬が同種の業務に従事する日本人と同等以上であること、バートタイムやアルバイトが対象にならないことが挙げられますが、これらは他の就労ビザと同じ要件です。

つまり、N1ビザ(特定活動)特有の注意すべき事項は「派遣先で勤務することができない」、「社会保険の加入状況について確認を求められる」という点にあります。

6.N1ビザ(特定活動)のまとめ

年々新しい外国人誘致、雇用施策が発表されていますが、こちらのN1ビザ(正式名称「特定活動(本邦大学卒業者)」は外国人雇用に非常に大きなインパクトを与えています。
これまでは、例えば留学生が頑張ってレストランでアルバイトをし、その頑張りが会社に認められ正社員として雇用しようと思っても、在留資格の壁があり雇用することが叶いませんでした。

現在は業務内容に限定はあるものの、これまで働くことが難しかった工場、介護施設などで働くことが可能となっており、より多くの活躍できる場所が提供されています。

日本語能力試験N1 は簡単な試験ではありませんが、より多くの方が同試験を受け、優秀な外国人の方がより多い選択肢の中から自分に合った会社で就労できることを願っています。